音楽理論 講座
作曲・編曲のための
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34. Upper structure triad の罠

Upper structure triad ( アッパーストラクチャートライアド - 上部構造3声和音 )とは、そう読んで字のごとし、 Tension chord ( テンションコード - 緊張和音 )の Tension 部分が、その Basic chord ( ベーシックコード - 基礎和音 )の上部で3声和音の構造をなしていることに着目して、このことを Harmonize ( ハーモナイズ - 和声構築 )の手法のひとつとして利用しようとした考え方のことです。

最初に言い出した人はきっと軽い気持ちだったのでしょう。もしかしたら本人自身はあまり使ってなかったかも知れません。ところがネーミングが良かったもので、思わぬヒット商品になってしまったことに、後悔さえしているような印象もあります。

もちろん、 Upper structure triad ( アッパーストラクチャートライアド - 上部構造3声和音 )に責任はありません。 Upper structure triad も、他の多くの音楽手法と同じように、ここぞというところで使ってこそ効果があるのであって、無闇に用いるとかえって逆効果というものです。大切なことはここでも Proportion ( プロポーション )。使う側の Sense (センス - 感覚 )の問題であることは間違いありません。

さて具体的にどのようなことかを解説したいところですが、言うのも恥ずかしい位の名前負け状態で、もう君には簡単過ぎて申し訳ないことを、予め申し上げておく必要を感じずにはいられません。

何故そんな前置きするかと言うと、人間はあまりに簡単な内容に直面した時、まさかこんなはずはないと思ってしまうことによって、すんなりと解決する内容であるにもかかわらず、思いのほか手こずるという現象があるからです。

では、心の準備をして Upper structure triad について進みましょう!



そうです。Upper structure triad ですから、もう十分に知っている Tension chord ( テンション コード - 緊張和音 )からUpper structure triadを抜き出せば良いのです。

Upper structure triad としてどんな Chordが見えますか?そうです、DやGmやBb+が見えます。

次に#9th や b13th を持ってくると、そうです、AbやEbが見えてきます。

もし見えなかったら、該当する Toneを Inversion ( インバージョン - 転回 )してください。それでもまだ見えなかったら、最初から学習をやり直しましょう。

さて、このような考え方で Upper structure triad ( アッパー ストラクチャー トライアド - 上部構造3声和音 )を探すと、はたしてC7の上に幾つの Major triad ( メジャー トライアド - 長3和音 ) ができるでしょうか?機械的に探してみると次のようになります。

ちょっと聴いた時には良さそうですが、どうも少しばかり重たい感じがします。そこでというか、本来というか、実際に活用される Voicing ( ボイシング - 声部作成 )にしてみましょう。

スッキリしました。何のことはない、 Base chord ( ベースコード - 基本和音) から Upper structure triad と重複する Toneを Omit ( オミット - 省略 )して、かつ Tension chord ( テンション コード - 緊張和音 )の時の Rule (ルール - 規則 )にしたがって、 Base chord ( ベースコード - 基本和音) の Toneをさらに Omit ( オミット - 省略 )しただけです。 Upper structure triad に Base chord の#9th ( シャープナインス - 増9度 )がある時は、#9th の Chord feeling ( コードフィーリング - 和音感覚 )を保つために、M3rdを残します。

この例で既に予想がつくように、 Upper structure triad と Base chord は、 Dual structure chord ( デュアル ストラクチャー コード - 二重構造和音 /分数コード) によって表現した分子と分母のすべての Toneを使う訳ではないということです。

言い換えると分子に記載された Upper structure triad によって、分母にある Base chord からの Omit toneが変化するということであり、これは Tension chord ( テンション コード - 緊張和音 )の時に、 Tension の種類によって Base chord から Omission ( オミッション - 省略 )を行ったことと全く同じです。

ここで突然の問題です。上記の5つ Upper structure triad から除外された Major triad ( メジャー トライアド - 長3和音 ) の Chord name と、それらの Chordが除外された理由を述べなさい。そうです、答えは次のようになります。

Cが除外されることは分母がC7ですから当然で、12-5-1=6で残りは6つ、そしてこれらの Chordが除外された理由は、 Base chord ( ベースコード - 基本和音) のC7の Chord feeling ( コードフィーリング - 和音感覚 )を疎外する、 △7th (メジャーセブンス- 長7和音 )もしくは 11th ( イレブンス- 11度 )の Toneを含んでいるからです。このうち △7th (メジャーセブンス- 長7和音 )は、 Base chord ( ベースコード - 基本和音) が Dominant ( ドミナント - 属和音 ) 7thである以上使用不可であることは当然として、 11th ( イレブンス- 11度 )については、次のように3rdを Omit ( オミット - 省略 )すれば、言い換えると Chord quality ( コードクォリティー - 和音特性 )をsus4にすれば使えます。

待ってください。sus4にする前も3rdを Omit ( オミット - 省略 )にしていませんでしたか?そうです、いくつかのケースで明らかに3rdを Omit ( オミット - 省略 )にしていました。

そうだとすると、sus4を除外するのは意味が無いような気がしませんか? 実はまさにそのとおりで、君自身がここはsus4、または 11th ( イレブンス- 11度 )であることが分かってさえいれば、最終的には特別に意識する必要が無いことが Upper structure triad のMerit( メリット - 長所 ) のひとつです。

したがって Dominant 7th chord ( ドミナント セブンス コード - 属7和音 )を Base chord ( ベースコード - 基本和音) にした時のMajor Upper structure triad をまとめると、 Base chord に対する △7th (メジャーセブンス- 長7和音 )を含んでいない、次の8つの Chordになります。12のKeyで確認しましょう。

on Dominant 7th chord 12Keys

御覧の通り、Keyによっては複雑な様相を呈しますから、Key of C だけでわかったつもりになっていると危険です。12のKeyで確認することの大切さをあらためて感じます。

上記のScore は、当然のようにこれだけの種類が存在することを示しただけですから、音楽的には極めて単調です。そんな中で、任意の Inversion ( インバージョン - 転回 )が頻繁に行われていることに気付いたと思います。 そうです、 Upper structure triad ( アッパー ストラクチャー トライアド - 上部構造3声和音 )は任意の Inversion が可能です。

そしてこのことによって Dominant 7th chord ( ドミナント セブンス コード - 属7和音 )を Base chord ( ベースコード - 基本和音) にした時の △7th (メジャーセブンス- 長7和音 )のように、明らかに Chord feeling ( コードフィーリング - 和音感覚 )を疎外する Tone以外の全ての Tone、C7に対してはB以外の Tone、すなわちC、Db、D、Eb、E、F、Gb、G、Ab、A、Bbを Lead note ( リードノート - 主旋律音 )として Harmonize ( ハーモナイズ - 和声構築 )を行うことが出来ます。

ここでもう一度確認しておきたいことは、 Upper structure triad ( アッパーストラクチャートライアド - 上部構造3声和音 )を使用するよりも、 Tension chord ( テンションコード - 緊張和音 )の時に学習した Hybrid chord ( ハイブリッドコード- 混成和音 )を使用した方が、より安定したSound になることです。そこで Mr. Tone( ミスタートーン )と致しましては、 Upper structure triadを使う前に、 Hybrid chord ( ハイブリッド コード- 混成和音 )の有効性を充分に学習することをお勧めしたいと考えます。同じ Lead note ( リードノート - 主旋律音 )に対して、 Upper structure triad ( アッパー ストラクチャー トライアド - 上部構造3声和音 )と Hybrid chord の両方で Harmonaize ( ハーモナイズ- 和声構築 )をして、Sound ( サウンド )の違いを確認しましょう。


ところで上の例では、 Dominant chord ( ドミナント コード - 属和音 ) 以外の Base chordも登場しました。まさに予想通り、 Upper structure triad ( アッパー ストラクチャー トライアド - 上部構造3声和音 )は Dominant chord 以外の Chord quality ( コードクォリティー - 和音特性 )の上にも成立します。それはそうですね、すべての Chord quality に対して Tension がある以上当然です。そして Dominant chord の時より、選択肢が少なくなることも予想できます。

Base chord が Major chord ( メジャーコード - 長和音 )の場合を見てみましょう。 Blues chord ( ブルースコード )の Tonic (トニック - 主和音 )としての I 7を、 Major chord の仲間に入れる考え方もあるようですが、そのことで混乱を招いている学習者を多々見受けるので、ここでは実践的な Upper structure triad の運用に留意して、混乱をさけるために、 Blues chord ( ブルースコード )の Tonic (トニック - 主和音 )としての I 7はBasic Major chord ( ベーシックメジャーコード - 基本長和音 )から除外します。

たった3つですか?そう、たった3つです。しかも、この内 F/Cはsus4ですから、実質的には2つです。

とても簡単です。余談ですが、B/CをこのBasic Major chord ( ベーシックメジャーコード - 基本長和音 )の仲間にいれて、 Tonic diminish chord( トニックディミニッシュコード - トニック減和音 )として解説してある教本もあるようですが、合理的なSound construction (サウンドコンストラクション- サウンド構成 )を行うためには、Diminish chord( ディミニッシュ - 減 )はDiminish chordとして、Basic Major chord ( ベーシックメジャーコード - 基本長和音 ) とは分離して理解した方が良いでしょう。

次に、 Base chord ( ベースコード - 基本和音) が minor chord ( マイナーコード- 短和音 ) の場合を見てみましょう。 ところで、この例では low interval limit ( ロー インターバル リミット - 低域協和限界 )(低域音程限度)ぎりぎりです。そんなところも確認しつつ、もしも濁りを感じたら、M2ndないしM3rd上に移調するだけで解消されます。あまり高くし過ぎると、今度はSoundに豊かさがなくなりますから注意して下さい。

今度は2つですか?はい2つです。ものの本にはEb/Cm7も Upper structure triad として説明している場合もあるようですが、そのことが不自然であることは、もう君の方がよく理解していますね。

次は、 Base chord ( ベースコード - 基本和音) が Half diminished 7th の場合です。
 
またしても2つです。2つですから簡単ですね。 次は、 Base chord が Tonic minorの場合を確認しましょう。
 
また2つですか?はい、2つです。世の中には多くの異説が出回っているのであえて解説すると、 Sound Worldにおいては、b7thを含んだminor 7th chord と Tonic (トニック - 主和音 ) minor chord ( マイナーコード- 短和音 )は全く別の存在です。

世の中には Upper structure triad について、あたかも難しく理論のように解説しているものもありますが、 ここで改めて Sound Worldの意味について考えてみましょう。

Sound Worldには、「しっかりとした世界」とか、「無理のない世界」という意味もあります。

さて、 Upper structure triad ( アッパーストラクチャートライアド - 上部構造3声和音 )が、極めて単純な考え方によって作られていることは、ここまでの学習で充分に理解できたと思います。しかし大切なことは実際の活用です。そこで、次の Chapterでは Upper structure triad の合理的分類と実践的な運用について研究します。

しかしその前にminor Upper structure triad についても確認しておきましょう。

これも Base chord に minor triad を乗せるだけですから簡単です。

え!今なんて言いました?「ちょっとばかばかしい!」って言いましたか?少なくとも心の中では・・・。

ハイ、それで良いのです。取り分け Base chord が Dominant chord 以外の時には無意味に近いものがあります。実際の創作ではほとんどの場合において、前に学習した Tension の Automatically added ( オートマティカリーアディッド - 自動付加 )で処理をした方が、確実かつ合理的です。

最後に、 Upper structure triad の基本的な理解を明確にするためには、次のように、 Diminished scale ( ディミニッシュドスケール ) の上に展開する Upper structure triad について知る必要があります。

Diminished scale 上に展開される Chordのうち Ab/C。7は、Ab/C7として Altered scale ( オルタード スケール - 変化音階 )上に展開される、C7(#9b13)から5thを Omit ( オミット - 省略 )した Chordと混同されることがあります。そこで、 Upper structure triad の理解をより深めるためには、 Upper structure triad を使った Chordと、 Scale の関係を検証する必要がありそうです。そこで、次の Chapterでは、勇気を持って、さらに Upper structure triad の深みに侵入してみましょう。--「Nothing venture, nothing win」--「虎穴に入らずんば虎児を得ず」-- あえて罠に捕らわれてみるのも面白いかもしれません。



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